ネズミの嫌いな音とは何でしょうか?超音波もアプリも撃退の効果がないの?その理由を詳しく解説しました

こんにちは、プロープル広報のkikuです。

「ネズミは音に弱いらしい」「アプリや超音波、猫の鳴き声、ラジオで追い払える?」など、音でネズミが出ていってくれる対策が気になる方も多いのではないでしょうか。

でもちょっと待ってください。

本当に音だけでネズミを追い払えるのでしょうか?

そこで、「ネズミの嫌いな音とは?」「超音波やアプリに撃退効果はあるの?」「ネズミは音にどう反応するの?」という疑問にわかりやすく丁寧に解説していきます。

ネズミの嫌いな音とは?

ネズミの嫌いな音とは、初めて聞く音です。未知の刺激を嫌います

大きな耳を持ち、音に敏感なネズミ。

では、ネズミが本当に「嫌い」と感じる音とは何でしょうか?

結論:初めて聞く音がネズミは嫌いです。

ネズミは経験したことがない音、つまり「未知で予測不能な刺激」を非常に嫌います。

このような刺激は「新奇性(しんきせい)」と呼ばれ、用心深く学習能力の高いネズミは、新奇な音に強く反応し、驚いて動きを止めたり、その場から逃げたりする忌避(きひ:嫌がって避けること)行動をとることがあります。

『ネズミの嫌いな音』まとめ

ネズミは、聞き慣れていない音や、予測できない刺激をとても嫌います。
こうした刺激に反応し、一時的にその場を避ける傾向があります。このような反応から、超音波なども「ネズミの嫌いな音」として知られています。

最近では、スマートフォンの「超音波でネズミを撃退できる」といったアプリも見かけるようになりました。

しかし本当に、こうしたアプリの音だけでネズミを追い払うことができるのでしょうか?


アプリの超音波はネズミを撃退する効果はあるの?

ネズミの嫌いな音で撃退できるアプリは本当に効果があるのでしょうか?

無料で使えるアプリを試すのも一つの手ですが、結論から言えばネズミを撃退するのは難しいと考えられます。

理由:一般的なスマートフォンのスピーカーが超音波を出せる構造になっていないからです。

スマートフォンは、人間が聞き取りやすい音(約20Hz〜20kHz)の範囲に最適化されています。一方で、ネズミが敏感に反応する「嫌いな音」は28〜40kHz付近の超音波。

このように、スマートフォンに内蔵されたスピーカーは超音波に対応していないため、アプリで再生していても実際には音が出ていません。

人間には聞こえない音域だからこそ“鳴っているように思える”ことがありますが、そもそもネズミにも聞こえていないのです。

ちなみに、「48kHz」「96kHz」といったハイレゾ対応のスマートフォンであっても、内蔵スピーカーの再生帯域は通常20kHz程度までに限られており、「ネズミの嫌いな音」とされる28kHz以上の超音波は出力できません。

また、ハイレゾ音源に表示される「48kHz」や「96kHz」は、音の高さではなく、音をデジタル化する際の「サンプリング周波数(録音の細かさ)」を表す値です。そのため、ハイレゾであることがそのまま超音波を含むという意味ではありません。

人間が聞こえる音域とネズミが聞こえる音域の違い

ネズミが聞こえる音と人間が聞こえる音の違いとは

人間とネズミでは、聞こえる音の範囲が大きく異なります。

下の表では、音の高さごとに「どんな音が、誰に聞こえるのか」をわかりやすくまとめました。

周波数帯域(音の高さの範囲)音の例人間に聞こえる?ネズミに聞こえる?
100Hz低音の男性の声、重低音の楽器音はっきりと聞こえる聞こえる(少し苦手)
1,000Hz(1kHz)普通の会話の高さ(話し声)、猫の鳴き声(約500〜1,200Hz)普通に聞こえるよく聞こえる
5,000Hz(5kHz)高めの女性の声、笛の音聞こえるよく聞こえる
10,000Hz(10kHz)金属が擦れる高い音、ピーピーと鳴る警報音若い人は聞こえるはっきり聞こえる
15,000Hz(15kHz)若者にしか聞こえない“モスキート音”一部の人のみはっきり聞こえる
20,000Hz(20kHz)人が聞こえるギリギリの高い音多くの人は聞こえない余裕で聞こえる
28,000Hz〜40,000Hzネズミがびっくりする「嫌いな音」帯域(超音波)完全に聞こえない特に反応しやすい(ただし短時間で慣れる)
50,000Hz〜90,000Hzネズミが求愛や警戒などで発する鳴き声の超音波帯域完全に聞こえないよく聞こえる(逆に引き寄せる可能性もあり)

この表からも、ネズミは人間には聞こえない高い音、つまり「超音波」にも敏感に反応します。

特に「ネズミの嫌いな音」とされるのは、28kHz〜40kHz付近の超音波帯域に多く含まれると考えられています。

ちなみに、ここでいう超音波とは、“人には聞こえないほど高い音”のことを指し、いわゆる「高音」よりもさらに高い周波数(20kHz以上)の音のことです。

一方で、ネズミは高い音だけでなく、「初めて聞く音」や「不規則な音」、「予測できない音」といった刺激にも、非常に敏感に反応します。こうした性質を利用すれば、超音波以外の音でも一時的な忌避効果を引き出すことができます。

ネズミの嫌いな音【応用編】

ネズミの嫌いな音を工夫して応用する

ネズミは「初めて聞く音」「不規則な音」に警戒する習性があります。そのため、たとえ超音波ではなくても、「ネズミの嫌いな音」になります。

例えば、

  • 不規則なリズムの音楽。
  • 人の声を流すラジオやテレビ。
  • アプリを利用した人工的な音。
  • 猫や天敵の鳴き声。

こうした音を、ネズミの通り道(ラットサイン)の痕跡がある場所に向けて、ランダムに流すように工夫すれば、ネズミが慣れるまでは警戒して近づかなくなることが期待できます。

ネズミの嫌いな音の注意点

ネズミの嫌いな音である猫の鳴き声にも適応してしまう。

ネズミは非常に賢い動物です。

音の出ている方向をじっと観察し、「危険がない」と判断すれば、驚くほど早く慣れてしまいます。

これは、天敵である猫を飼っていても同様です。
最初は猫の存在に警戒していても、「この猫は自分に危害を加えない」と判断すると、姿を見せないようにしながら上手に環境に適応していきます。

このように、繰り返し経験することで反応が薄れ、やがて慣れてしまう現象を「馴化(じゅんか)」と呼びます。馴化とは、脅威や害がないと学習した刺激に対し、反応を示さなくなる行動学的な適応反応です。

さらに注意すべき点として、忌避(きひ:いやがって避けること)を目的に使うつもりでも、使用する超音波の中には、逆にネズミを誘引(ゆういん:呼び寄せてしまう)してしまう可能性のある周波数が含まれているという報告もあります。

例えば、雄(おす)ネズミが発する鳴き声には、超音波性の求愛音が含まれており、周波数帯によっては仲間、特にメスを引き寄せる誘因になることがあるとされています。

ネズミが音に慣れてしまうことや、予期せぬ誘引のリスクがあることをふまえると、音だけでネズミを長期間追い払い続けるのは現実的に難しいと考えられます。

ネズミの嫌いな音で忌避させるつもりが寄せ付けてしまう事にも。

「ネズミの嫌いな音」だけではなく、侵入口の遮断や衛生管理などの物理的な対策と組み合わせて行うことが重要です。

ここまでで、ネズミは音に対して一時的に反応するものの、すぐに慣れてしまうことがわかりました。

それでは次に、ネズミがどのような音の種類に対して、反応の違いがあるのかを具体的に見ていきましょう。


ネズミの嫌いな音の一覧とその反応

ネズミの嫌いな音とその音を聞いたときのネズミの反応のまとめ

ネズミがどのような音の種類に対して、どのような反応を示すのでしょうか?

「ネズミが嫌がる・警戒する音」の種類と、その反応についてまとめました。

音の種類内容周波数帯域(音の高さの範囲)ネズミの反応
超音波20kHz以上の高周波音。人間には聞こえないが、ネズミには聞こえる。28〜40kHz(嫌いな音・忌避音)初期に驚愕・停止などの反応。ただし慣れてしまい、持続しない。
突発的な音ネズミにも人間にも聞こえる、突然の大きな音(例:音の大きさ100dB程度)500Hz〜10kHz(音の種類による)強い驚愕反応(ビックリする)を示すが、数回で慣れてしまう。
天敵の鳴き声(猫など)捕食者の鳴き声(録音を含む)400〜1200Hz程度(録音音源や環境により異なる)一時的な警戒をする。実体がなければ学習されてしまう。
ネズミの鳴き声求愛や、強いストレス・不快を表すときに出す仲間の鳴き声(超音波)求愛の鳴き声:50〜90kHz
ストレス時の鳴き声:30〜47kHz
警戒反応も見られるが、忌避ではなくメスを呼び寄せる可能性がある。
人工音(アプリ・ラジオ・スマホなど)ラジオの声、BGM、エンジン音、電子音など100Hz〜10kHz前後(一般的に人間も聞こえる範囲)警戒反応が見られるが、慣れると完全に無視される傾向。

一覧からもわかるように、ネズミは“未知の音”に対して一時的に強い反応を示すことがあります。しかし、こうした音も繰り返し聞くことで慣れてしまい、やがて反応しなくなってしまいます。

ネズミは、状況を判断し行動する際に、主に次のような感覚を使っています。

  • 嗅覚(きゅうかく):においを感じ取る力
  • 聴覚(ちょうかく):音や振動を聞き分ける力
  • 触覚(しょっかく):ひげ(触毛)や体毛などで周囲を探る力

このように、ネズミは視覚よりも嗅覚・聴覚・触覚に強く依存して行動しています。なかでも聴覚は敏感ですが、音にすぐ慣れるため、音による対策はあくまで補助的な手段とお考えください。

ネズミの撃退には侵入口の遮断・食べ物の管理・清掃など、根本的な環境改善と組み合わせて行うことが重要となります。

よくある質問

ネズミの嫌いな音のアプリって効きますか?
結論:ほとんど効果は期待できません。
ネズミの嫌いな音は、主に28〜40kHzの超音波ですが、スマートフォンの内蔵スピーカーは20kHzまでの音しか再生できない設計のため、アプリでその周波数を設定しても、出力されないため、ネズミに聞こえていない可能性が高いのです。また、ネズミは一時的に驚いてもすぐに慣れるため、たとえ音が届いたとしても長期的な撃退効果はありません。
YouTubeや動画サイトで超音波を流せば、ネズミを撃退できますか?
結論:動画サイトで流す超音波では、ネズミを撃退する効果は期待できません。
ネズミが嫌がる音は28〜40kHz程度の超音波帯域とされていますが、YouTubeの音声は20kHz以上の高周波をカットして圧縮されています。さらに、視聴に使う一般的なスマートフォンやPCのスピーカーも20kHz以上を出力できないため、仮に動画に超音波が含まれていたとしても、再生機器の構造上、ネズミに届かないのです。
ネズミは猫の鳴き声を嫌がるって本当ですか?
結論:一時的に警戒することはありますが、効果はすぐに薄れます。
ネズミは主に、聴覚(ちょうかく)・嗅覚(きゅうかく)、そしてひげ(触毛:しょくもう)による触覚(しょっかく)を組み合わせて環境を判断しています。猫の鳴き声などの音に対しては、主に聴覚を通じて反応し、一時的に警戒することがあります。ただし、猫のにおいや気配がなく、猫の動きによる空気の動きや振動、接近がないとわかれば、すぐに「危険はない」と判断して慣れてしまいます。

まとめ

  • ネズミの嫌いな音とは「初めて聞く音」「予測できない音」。
  • 超音波(28〜40kHz)は一時的に反応するが、すぐに慣れてしまう。
  • 一般的なスマホのスピーカーでは超音波の音は出せない(20kHzまで)。
  • 音楽やラジオでも「不規則に流せば」一時的な効果は期待できるが、音だけではやはり慣れてしまう。
  • 猫の鳴き声でも、危害がないと判断したら警戒してもすぐに学習し、適応してしまう。

ネズミの嫌いな音を使った対策は、あくまで補助的な手段にすぎません。

効果的な対策には、侵入口となる隙間を見つけてふさぐなど、物理的な対処が求められます。

ネズミは繁殖力が強く、侵入を許すとすぐに数が増え、天井や壁に巣を作られると、糞尿による汚染や悪臭が広がり、住環境や健康にも深刻な影響を及ぼすことになります。

ご自身で試して、困難に感じたら見積もり無料の弊社までご相談ください。お見積り後のキャンセルも大丈夫です。



<参考文献>:神田浩一ほか. 超音波を利用したネズミ防除装置の開発. 研究報告. 2010(5), 東京都立産業技術研究センター. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000039-I9212383

<参考文献>:広中 直行, 驚愕反応の馴化におよぼす副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) の効果, 動物心理学年報, 1982-1983, 32 巻, 1 号, p. 23-28, 公開日 2009/10/13, Online ISSN 1883-6283, Print ISSN 0003-5130. https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip1944/32/1/32_1_23/_article

<参考文献>:Holy TE, Guo Z (2005) Ultrasonic Songs of Male Mice. PLoS Biol 3(12): e386.https://doi.org/10.1371/journal.pbio.0030386

<参考文献>:大湾 麻衣, 入戸野 宏, デジタル音源のサンプリング周波数が聴取者の心理・生理状態に及ぼす影響, 生理心理学と精神生理学, 2020, 38 巻, 3 号, p. 169-176, 公開日 2021/03/19, [早期公開] 公開日 2020/07/04, Online ISSN 2185-551X, Print ISSN 0289-2405,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjppp/38/3/38_2003br/_article/-char/ja