ゴマみたいな虫、黒くて動かないその正体とは?

こんにちは、プロープル広報のkikuです。

床にポツンと黒い粒…「あれ、ゴマ?」

食器棚やシンク、畳の隅にも、なぜかあちこちに黒ゴマのようなものが落ちている。

でも、どこか変。よく見ると、なんとなく“虫っぽい”…?
動かないけど虫……何なのこれ?

正体がわからないまま増えていく、“ゴマみたいな黒いやつ”。ちょっと気持ち悪いですよね。

今日のテーマは、「ゴマみたいな黒い動かない虫の正体とは!?」、「対策と人体への影響」のお話しです。

ゴマみたいな動かない虫の相談窓口

ゴマみたいな黒い動かない虫…

どこから来たのかわからない「ゴマみたいな黒い虫の正体とは?」

正体:「シバンムシ」と呼ばれる小さな虫(甲虫:こうちゅう)です。

5月〜10月頃によく発生し、体長はわずか2〜3mmほど。色は黒みがかった茶色(褐色〜黒褐色)で、見た目がまるで黒ゴマのように見えることから、気づかずに触ってしまうこともあります。

このシバンムシは驚くことに、乾燥した植物由来の素材(=乾燥植物質)であれば、ほとんど何でも食べてしまいます。

例えば、家庭内でよく見られる「ジンサンシバンムシ」や「タバコシバンムシ」などのシバンムシ類は、乾麺・香辛料・小麦加工品・漢方薬・ペットフードなどの乾燥食品をはじめ、畳や本、紙袋、たばこ、木材、さらには仏壇の内部まで食害することがあります。

※ちなみに、甲虫とは、堅い前翅(鞘翅:さやばね)で後翅(こうし)と腹部を覆う昆虫の仲間のことです。

なぜ動かないの?その3つの理由とは

この、何でも食べてしまう「シバンムシ」はなぜ動かないのでしょうか?

ゴマと間違えるほど動かないのは、次の3つの理由が考えられます。

理由1:夜行性のため、昼間は動かない

夜間に活動する性質があるシバンムシは、日中は物陰で動かずじっとしています。

理由2:寿命が短い

成虫の寿命が10〜25日ほどと短く、すでに死んでしまっている可能性があります。

理由3:温度条件により活動できない

「ジンサンシバンムシ」は約13℃、「タバコシバンムシ」は約15℃が活動できる最低温度です。これを下回ると動きが鈍くなり、死んだように見えることがあります。

また逆に、35℃を超えるような高温環境では活動が弱まり、場合によっては死んでしまうこともあります。

「ゴマみたいな黒い動かない虫の正体」まとめ

5月〜10月頃(春〜秋)に多く発生する「シバンムシ」という小さな虫が、黒いゴマのように見える虫の正体です。動かないのは、夜行性の性質や寿命の短さ、周囲の温度環境などが理由とされています。

シバンムシは、乾麺(パスタなど)や香辛料(七味など)、菓子、ペットフード、本、たばこ、畳などさまざまな乾燥品を食害するため、長期間保管している食品や、動かしていない本や物の裏などには注意が必要です。


どこから来たの?シバンムシの発生源

シバンムシはどこから来て、どこで発生するのか?

あらゆるものを食害するシバンムシは、どこから家の中に入って来るのでしょうか?

答え:多くのシバンムシは“外から入ってくる”のではなく、“家の中に持ち込まれた食品や物”の中から発生します。

1匹だけ見つかった場合は、たまたま室内に入り込んだ可能性もありますが、続けて何匹も見つかるようなら、卵や幼虫の状態で家の中にある物に潜んでおり、そこから発生したと考えられます。

つまり、家の中に“持ち込まれていたモノ”の中で育ち、成虫になって現れるのがシバンムシの特徴です。

多くの場合、そばやパスタなどの乾麺、香辛料(七味・こしょうなど)、菓子類(パンやビスケット)、畳、本、紙袋、家具などの中に、卵や幼虫の状態で持ち込まれており、それらがある場所の気温や湿度などの条件がそろうと成虫が現れます。

食品や日用品の袋に1mmほどの小さな穴が開いていたら、そこから成虫が出てきたサインかもしれません。

食品から発生するケース

シバンムシが食害するもののうち、とくに発生例が多いのは乾燥食品です。

食品カテゴリ製品例シバンムシの痕跡対策と注意点
乾麺類そば、パスタ、そうめんフンが混じる、包装に1mmほどの穴がある密閉容器で保管し、長期保存を避ける
香辛料類(粉末)七味唐辛子、こしょう、カレー粉など変色とにおいの変化、袋に穴がある開封後は密閉容器で冷暗所に保存
穀粉・加工粉類小麦粉、米粉、パン粉粉の塊がある、虫や糞の痕跡使用頻度の低いものは小分け・密閉保管
菓子類ビスケット、乾パンなど表面のくぼみ、かじり跡、包装の穴紙包装は早めに消費
乾果類ドライフルーツ、干し芋表面の穴や粉化密閉容器で保存する
インスタント粉末食品スープ粉末、出汁の素、即席味噌汁、かつお粉粉末に虫の混入、袋に穴使用後は袋ごと密閉容器に入れる
漢方薬・生薬高麗人参、乾燥薬草、漢方類異臭、粉化、製品に穴防虫容器や瓶で密閉保管する
ペットフードドライタイプ、ふりかけ塊と異臭開封後はそのまま密閉容器へ
嗜好品系・その他たばこ、ティーバッグ、粉末飲料袋や箱に1mm前後の穴、木くず状の粉紙包装のまま長期放置しないこと

上の表にあるような乾燥食品では、袋の中でシバンムシが発生し、粉状のフンが混じっていたり、食品包装に直径1mmほどの小さな穴が開いていたりする場合があります。これらは、内部で幼虫が育ち、成虫が脱出した痕跡である可能性があります。

とくに長期保存された食品や開封後に放置された乾燥食品は、気づかないうちに食害が進んでシバンムシの発生源となることもあります。

畳や本、家具からも発生

一般的に、害虫は食品だけを食べるイメージがありますが、シバンムシは乾燥食品だけでなく、畳・書籍・木製家具なども食害し、そこから発生源となります。

実際に、次のような被害が報告されています。

畳:油断しがちな隠れた発生源

  • 畳の織り目の中から、タバコシバンムシが発生。
  • 長期間動かしていない畳の内部は大量発生源となります。
  • 畳にフンや穴(1mm前後)が見つかれば、内部に潜んでいた痕跡かも。

書籍:古い紙類や文庫本での発生

  • 代表的なのは、フルホンシバンムシやザウテルシバンムシで、「書籍虫」として文化財や古文書への被害が古くから知られています。
  • 段ボール・文庫本・書籍棚の奥、古紙なども注意が必要です。

家具や建材:木材の内部からも発生

  • 古い木製家具や床板、柱、仏壇などで発生が確認されており、乾燥した材が特に狙われやすい。
  • 壁紙のふくらみや床の沈み込みなどから被害に気づくケースもあります。
  • 内部には粗い粒状のフンや空洞が残ることもあり、放置すると劣化につながります。
  • 「ケブカシバンムシ」や「マツザイシバンムシ」は、木材専門の食害種として知られています。

このように、シバンムシは“場所に発生する”虫ではなく、持ち込まれた食品や日用品の中で成長し、それらがある場所で発生して初めて姿を現す害虫なのです。


シバンムシと人体への影響は?

刺すのか?噛むのか?シバンムシの人体への影響とは?

シバンムシ自体は人を刺したり、噛んだりすることはありません。

しかし、シバンムシがいることで、間接的な被害が起こることがあります。

その被害とは、寄生する蜂『シバンムシアリガタバチ』に刺されることです。

「シバンムシアリガタバチ」とは、ジンサンシバンムシやタバコシバンムシなどの幼虫に寄生して成長する寄生蜂(きせいいばち)です。

シバンムシに寄生する「アリガタバチ」とは?

シバンムシに寄生するアリガタバチとは?
  • ハチの仲間ですが、メスには翅(はね)がありません。
  • 刺すのはメスで、尾の先の産卵管に毒針をもっています。
  • 大きさは約1.5〜2mmと非常に小さく、見た目はアリに似ています。
  • 寄生先であるシバンムシが増えると、アリガタバチも増え、畳やじゅうたんの上で人を刺すことがあります。

「シバンムシアリガタバチ」に刺されるとどうなる?

  • 刺された直後に「チクッ」とした痛みがあり、1時間ほどで軽快することもある。
  • 何度も刺されると、翌日にかゆみ・紅斑(こうはん:皮膚の赤み)・丘疹(きゅうしん:ぶつぶつ)が出ることがある。
  • まれにアナフィラキシーなど重いアレルギー反応を起こすこともある。

重症化のリスクと対処法

  • 軽症なら経過観察。かゆみや腫れが強い場合はステロイド外用薬を使用される。
  • 呼吸困難や血圧低下などの全身症状が出た場合は、救急対応が必要。

シバンムシとアレルギー

  • シバンムシの体表や消化管に付着したカビや細菌が、吸入性アレルゲンになる可能性あり。
  • タバコシバンムシについては、喘息患者の約15%がアレルギー反応が見られたという報告もあります。

シバンムシの基本対策

シバンムシの基本と対策とは?

シバンムシの発生を防ぐには、発生源の特定と除去、長期保存品の管理、必要に応じた駆除処理が基本です。

予防の基本は「持ち込まない・育てない」

  • 卵や幼虫が潜んだ食品や日用品を家に持ち込まないこと。
  • 乾麺・香辛料・ペットフードなどは密閉容器で保管。
  • 古い畳や本、段ボールなども放置せず、定期的に点検・整理。

発生したら?

  • 食品から発生している場合は、発生源の食品を廃棄。
  • 畳などが発生源と考えられる場合には、天日干しや乾燥機で加熱処理する。

駆除処理の基本とは

  • 長期保存されている物は定期的に点検し、使わないものは処分する。
  • 食品には殺虫剤を使わない。
  • 幼虫は内部や隙間に潜むため、殺虫剤が効きにくいことにも注意。

よくある質問

部屋にゴマみたいな虫がいたらどうすればいいの?
結論:それ、“シバンムシ”かもしれません。まずは発生源を探しましょう。
シバンムシは乾麺や香辛料、畳、本、家具などの中で育ち、成虫になって出てくるため、原因となる食品や物品を見つけて対処することが大切です。放置すると部屋中に広がるおそれがあるため、袋に小さな穴が開いていないか、フンのような粉が出ていないかを確認しましょう。
シバンムシを放置するとどうなる?
結論:放置すると家の中で増殖し、被害が広がるおそれがあります。
シバンムシは見つけた1匹だけでは終わらず、見えない場所で育った幼虫が次々と成虫になって現れることがあります。食品や畳、本、木材など複数の場所で発生源が広がると、家全体に被害が及ぶ可能性もあります。また、シバンムシに寄生するアリガタバチという虫が発生し、人を刺す二次被害にも注意が必要です。
シバンムシが1匹いたらどうしたらいいの?
結論:すぐに発生したと断定せず、周囲の食品や保管物を軽く点検して様子を見ましょう。
シバンムシは成虫が外部から偶発的に入り込むこともあるため、1匹だけなら即座に発生源があるとは言い切れません。ただし、乾麺や香辛料、畳、本などからも発生する虫なので、念のため食品棚や保存している備蓄品を軽く確認しておくと安心です。

まとめ

  • ゴマみたいな黒い動かない虫の正体は、「シバンムシ」。
  • 動かない理由は、夜行性・寿命・温度による影響が考えられる。
  • シバンムシの多くは、外からは入ってこない。
  • シバンムシは乾燥食品や畳、本、木製家具など食べる。
  • シバンムシは刺したり、噛んだりしません。
  • シバンムシに寄生する『アリガタバチ』が刺す二次被害に注意。
  • シバンムシの基本対策は持ち込まない、育つ環境にしない。
  • シバンムシの駆除の基本は乾麺など乾燥食品には定期的に点検する。

シバンムシは乾麺や畳、本、木材など見えない場所で幼虫が静かに育ち、成虫になって飛び出して初めて気づかれることが多い害虫です。

被害が繰り返される場合や発生源が特定できないときは、当社含め専門業者への相談も検討しましょう。



<参考文献>:夏秋 優、Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 改訂第2版、Gakken、2023、p.276、

<参考文献>:川上 裕司 ほか、アレルゲン害虫のはなし ―アレルギーを引き起こす虫たち―、朝倉書店、2019、p.160、

<参考文献>:安富 和男 ほか、衛生害虫と衣食住の害虫 改訂版、全国農村教育協会、1995、p.310、